「日本には法務部を持つ会社が、いったいどれほどあるのか?」
そんな素朴な問いも、事業戦略を考えるうえでは決して軽視できません。マーケットのスケール感、営業対象の母集団、リソース投下の優先順位──あらゆる意思決定の前提となるのが、こうした定量的な見積もりです。
本記事では、コンサルタントとしての視点から「日本の法務部の数」をフェルミ推定により算出してみます。あくまで概算ですが、仮説構築や戦略立案の出発点として、参考にしていただければ幸いです。
STEP1:まずは母集団 ―― 日本に会社は何社ある?
まずは母集団、すなわち日本にどれくらい株式会社が存在するかを把握するところから始めます。
国税庁や総務省の統計を総合すると、日本の法人のうち株式会社は約400万社程度と見られています。
これを出発点とします。
STEP2:「法務部が必要な会社」とは?── 従業員数で絞り込む
次に、すべての会社が法務部を持っているわけではないため、法務機能のニーズが高い企業群を絞り込みます。
一般に「中小企業基本法」では、従業員300名未満の製造業などを中小企業と定義しています。
総務省や中小企業庁の資料でも、日本企業のうち約99.7%が中小企業とされています。
つまり、従業員300名以上の大企業は全体の1%未満=約4万社が該当すると考えられます。
契約審査やリスク管理の業務量から考えても、従業員数300名を超えたあたりから法務部の必要性が一気に高まるというのが現場感覚としてもあります。
STEP3:業種によって法務ニーズは異なる
さらにこの4万社を、業種ごとに分けて法務部の保有率を推定します。
法務リスクが比較的高い業種(製造、IT、金融など)では、契約審査やコンプライアンス体制が重視されるため、法務部がある割合は高い傾向にあります。
これらを全体の3割程度とし、設置率を90%と仮定します。
一方で、小売やサービス業などでは、規模が同じでも法務部の設置率が相対的に低い傾向があります。こちらは全体の7割とし、設置率は60%と仮定してみます。
計算すると:
- 高リスク業種:4万 × 30% × 90% = 約1.1万社
- 低リスク業種:4万 × 70% × 60% = 約1.7万社
- 合計: 約2.8万社
STEP4:上場企業の存在を加味する
上場企業は法務ガバナンスがより厳格に求められ、原則として法務部を持っていると考えてよいでしょう。
現在、東証に上場している企業は約4,000社ありますが、その多くはSTEP3でカウント済みの企業に含まれます。
そこで、ここでは従業員300名未満ながら上場している会社などを想定し、1,000社追加でカウントします。
これで合計は、2.8万社 + 1,000社 = 約2.9万社となります。
STEP5:「隠れ法務部」の存在を補正
近年では、法務部という名前を使わずに、総務部や経営企画部の中に法務専任者を置く企業も増えています。
たとえば「コーポレートリーガル室」「法務担当者(1名のみ)」のようなケースです。
こうした“隠れ法務部”を加味して、全体の5%を上乗せしてみましょう。
2.9万社 × 1.05 = 約3.0万社
◆ 結論:日本に法務部を持つ会社は、おおよそ「3万社」
このように推定してみると、
日本に法務部がある企業は約3万社というのが現時点でのオーダー感です。
このスケール感を持っておくことで、
- 法務サービスの市場規模の把握
- 営業ターゲットの母集団の上限
- 自社リソースの優先配分
などのようなビジネス判断にも活かせます。
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