法務部の業務改善には様々な方法があります。法務部員の増員や一時的な外部への代行の他、法務コンサルも選択肢のひとつです。今回は法務プロセスの再設計、体制づくりを支援する法務コンサルについて、フェルミ推定で市場規模(年商ベース)を見積もります。
STEP1:母集団を置く (法務部を持つ企業の数とコンサル利用の母集団)
起点とする母集団は、法務部または準ずる機能を持つ企業です。前提として、ここでは以前試算した通り約3万社と置きます(試算の根拠は「日本に法務部がある企業は何社?」をご参照ください)。
この3万社の中に法務コンサルの発注者が含まれますが、法務コンサルの発注は中堅〜大企業が中心です。
ここでは、大企業・上場相当を60%とおき、さらに絞り込みます。
3万社×60%=1.8万社
この1.8万社をコンサル利用可能性のある母集団とします。
STEP2:年間で「変革モード」に入る企業を見積もる
すべての企業が毎年業務改善プロジェクトを走らせるわけではありません。
上場準備・M&A・海外展開・内部統制強化・システム更改などの企業における変化ドライバーを勘案し、年間で30%が「法務業務を見直したいフェーズ」に入ると仮置きします。
1.8万社×30%=5,400社
STEP3:コンサル利用率をかける
変革の火種はあっても、完全内製で進める企業もあります。
ここでは、リソース、専門性、中立性などの観点を勘案し、20%がコンサルを併用すると置きます。
5,400社×20%=1,080社
この1,080社が「ある年にコンサル案件を発注する企業数」に含まれます。
STEP4:1社あたりの案件頻度と平均単価を置く
コンサルティングプロジェクトの“型”は一般的に大きく3つに分けられます。ここでは以下のように仮置きします。
- 診断… 300万円
- 再設計… 1,200万円
- 定着・研修… 600万円
実務ではこの組み合わせで走ることが多いため、発生比率を40%/40%/20%と仮置きし、加重平均単価≒900万円とします。
また、発注企業1社あたりの年間案件数を平均1.1件と置きます。
1,080社×1.1件×900万円=約107億円 が中央的な見立てになります。
STEP5:上振れ・下振れを補正してレンジ化
最後に、上振れ方針と下振れ方針を勘案します。
下振れ:コンサル利用率15%、案件1.0件、平均単価750万円
→ 母集団1.8万社 × 変革モードの企業割合30% × コンサル利用率15% × 1社あたりの年間案件数1.0件 × 平均単価750万円 = 約61億円
上振れ:コンサル利用率25%、案件1.2件、平均単価1,100万円
→ 母集団1.8万社 × 変革モードの企業割合30% × コンサル利用率25% × 1社あたりの年間案件数1.2件 × 平均単価1,100万円 = 約178億円
◆ 結論:日本の「法務業務コンサルティング支援」市場は、年商ベースで約61〜178億円規模
今回の推定では、法務コンサルティングの市場規模は年商ベースで約61〜178億円、中心値は107億円台となりました。
コンサル市場全体の市場規模が約1兆3,500億円と言われている中、その0.8%にとどまる結果となっています。
この背景には、企業におけるコストセンターである法務部に対する投資が後回しになっていることのほか、法務領域に専門性をもったコンサルタントが限定的であることも起因していると考えられます。
弊社としては、法務業務そのものを見直し、業務の標準化・テクノロジーの導入・仕組みとしての運用など、体制の再構築へのサポート活動を続けていき、日本企業が更なる成長を実現できるドライバーとなるべく活動を続けてまいります